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二上山だより

奈良民報で「二上山に咲く花々」の連載

 週刊紙「奈良民報」紙上で「二上山に咲く花々」の連載をしました。情趣豊かな花の写真は香芝市の澤木仁さんの作品ですが、同氏と「奈良民報」編集者の了解を得てこの紙面に転載させて頂きます。立派な写真にそぐわない文章ですがご容赦願います。

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イワタバコ(岩煙草)
イワタバコ科イワタバコ属

花期は7月~8月

 今夏、大阪側の水場の近くに立派な群落があるのを知りました。岩壁に自生し葉がタバコの葉に似るのでこの名に。表面にしわのある濃緑色の大きな葉と美しい赤紫色の花、いずれも魅力的で、盛夏の二上山を代表する花になるでしょう。四季折々に山の素晴らしさを教えてくれる二上山にどうぞお出で下さい。



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ウバユリ(姥百合)
ユリ科ウバユリ属

花期は7月~8月

 樹林下で1メートルほどの高さに、大型の白緑色の花を横向きに咲かせます。花が開く頃、葉がなくなることが多いので「葉(歯)の無い姥」というのが名前の由来と言いますが、少しかわいそうですね。その葉はハート型で大きく、葉脈が網目状でとても単子葉とは思えません。鱗茎からは良質の澱粉が取れるそうです。

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ネムノキ(合歓の木)
マメ科ネムノキ属

花期は7月~8月

 夏、名阪国道を走ると、淡紅色の花を着けたネムノキが目立ちます。二上山でも拓けた崖地、荒地に自生しています。マメ科特有の根瘤バクテリアとの共生で他の植物よりも荒地に強いのです。夜、葉が閉じて垂れ下がるのでこの名になりましたが、花は夕方から開きます。赤いのはおしべの色。夏の季語。

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ツルアリドオシ(蔓蟻通)
アカネ科ツルアリドオシ属

花期は6月~7月

 蟻をも貫く鋭いとげを持つのが同じアカネ科のアリドオシ。それに似てつる性なのがネーミングの由来。写真のような可愛い花が二つ並んで咲き、秋に真っ赤な果実を実らせますが、その実は二つが合着したもので、形もいびつで二つの黒いポチが二花の名残りのようです。花も実も愛嬌たっぷりの愛すべき植物です。

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ネジバナ(捩花)別名モジズリ
ラン科ネジバナ属

花期は4月~9月

 大津皇子の墓とされる鳥谷口古墳の斜面に群生する他、山頂部の明るい草地などに自生しています。淡緑色の花茎に可愛らしいピンクの花を横向きに多数咲かせます。花はらせん状に咲きあがります。この花を「左巻き」とも呼ぶのは、その螺旋の巻き方によるのですが、中には右巻きのも有るので、確かめてみてください。

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イチヤクソウ(一薬草)
イチヤクソウ科イチヤクソウ属

花期は6月~7月

 薄暗い雑木林の地面に、20~30㎝もの花茎を伸ばして白い花を下向きにいくつも咲かせます。5弁の花はしゃれた白磁の碗を思わせ、木漏れ日を浴びた立ち姿はさながら“緑陰のバレリーナー“、思わず拍手したくなります。止血または傷の薬草、特に毒蛇の咬み傷に有効とされたと広辞苑にあります。

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テイカカズラ(定家葛)
キョウチクトウ科テイカカズラ属

花期は6月~7月

 6月半ばから白いスクリュウのような花を路上に散り落とし、あたりを甘い香りで包みます。歌人・藤原定家が、恋い慕った女性の墓にまとわりついたとの話からの命名。高名な文化人を笑い者にしたところに、庶民の諧謔を思わせますが、他の植物を覆い尽くして咲き誇る様はしたたかさを感じさせます。つる性。

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フタリシズカ(二人静)
センリョウ科チャラン属

花期は4~6月

 静御前の霊が、霊の乗り移った菜摘女と二人で舞い、自らの弔いを吉野山勝手社の神職に頼んだという逸話に基づく命名。そう聞けば茎の頂から出る2本(3~5本も)の花穂は白い花を点々と付けて、その清らかさが増すようです。林下に咲く多年草。同じ仲間のヒトリシズカは二上山でまだ出会いません。

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エゴノキ(斉墩果=当て字)
エゴノキ科エゴノキ属

花期は5月~6月

 高木の枝の先から白い花を沢山ぶら下げます。その様子も、その香りも爽やかで初夏を代表する花。果実を食すとえぐ(えご)いのでこの名に。花を見たら、枝の先をよく見てください。菊花のような変形物(エゴノ猫足と呼ばれる虫こぶ)や小さなオトシブミ(葉の巻物)がぶらさがっています。

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ギンリョウソウ(銀竜草)
イチヤクソウ科ギンリョウソウ属

花期は4月~8月

 真っ白な植物。その姿が竜の頭部に似るからこの名に。葉緑体を持たず土中の菌類に栄養も依存。その菌類は他の植物から栄養をもらっているでしょうから、菌類を介しての植物同士の地下ネットワークがあるのかも。生物多様性での菌類の役割に改めて注目が。地下での「宇宙のひろがり」を感じます。

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ウツギ(空木)
ユキノシタ科ウツギ属

花期は5~7月

 いわゆる「卯の花」。今年二上山でのホトトギスの初音(はつね)は5月13日でした。時をあわせるかの如く、ウツギが満開へと向かいます。幹が中空なので「空木」。軽くて丈夫で細工しやすく、鳥籠の止まり木として使われ、子供の頃、鳥屋に頼まれて小遣い稼ぎしていたのを想い出します。一本3円でした。

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シライトソウ(白糸草)
ユリ科シライトソウ属

花期は5月~6月

谷筋や登山道の崖地に、また遊歩道の笹薮の端にもひそやかに咲いています。細いブラシ状の白い花穂を見れば、それが名の由来である事が分かります。湿った木陰で数本群れて咲くと、それだけで涼風を呼び込みそうで、如何にも「初夏の花」の感じです。清楚で美しく、いい香りを漂わせます。

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タチツボスミレ(立坪菫)
スミレ科スミレ属

花期は3月~5月

 数多いスミレの中でも、日本を代表するのがタチツボスミレです。個体数の多さでは二上山でもおそらく一番でしょう。名前は「茎が立ち上がる庭(坪)に咲くスミレ」の意で、スミレの語源は大工さんが使う墨入れに似るからが有力説です。芭蕉が「山路来てなにやらゆかし菫草」と詠ったのもこの花だと言われています。

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ウワミズザクラ(上溝桜)
バラ科サクラ属(ウワミズザクラ属とする説も)

花期は4~5月

 古代、樹皮に溝を彫って占いに使ったので上溝桜となり、さらにウワミズと転訛してこの名に。ソメイヨシノやヤマザクラが散る頃、緑の葉の中に7~8cmほどの棒ブラシ状に白い花を多数密に着けます。晩夏に生(な)る小さな実の塩漬けを新潟の山宿で食べた事があります。果実酒にもするそうです。

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カスミザクラ(霞桜)
バラ科サクラ属

花期は4~5月

 遠くから見ると霞のように咲くとのこと。登山口・初田川園地の南側に大きな個体があり、透明感のある白い花を咲かせます。ヤマザクラが花を終えるころ、葉と花を同時に着け始めます。「古の奈良の都の八重桜ーー」と詠(うた)われ、奈良県の県花となっているナラノヤエザクラはこれの一変種。

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ミヤコアオイ(都葵)
ウマノスズクサ科カンアオイ属

花期は4~5月

 まるで餌をねだる子ツバメたちのよう。この珍妙な花を地に埋もれるように咲かせます。この花の花粉の運び屋・ナメクジやカタツムリの生活に合っているのですね。進化の妙に脱帽です。春の使者・ギフチョウの食草。京都でのものに名付けられたので都葵。杉林でも雑木林でも自生しています。

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コバノトネリコ(小葉梣) 別名アオダモ
クスノキ科トネリコ属

花期は4~5月

 ヤンキース・イチローの芸術的安打とその量産は、たぐい稀な天才とたゆまぬ努力との結晶でしょうが、もう一つ見落とせないのが彼の愛用バット。日本のアオダモで作られます。この木のしなやかさ、強靭さが活かされているのでしょう。昔は天秤棒を作ったそうです。花はいかにも涼しげ。

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シュンラン(春蘭)
ラン科シュンラン属

花期は3~4月

 文字通り春一番に咲くラン。香気、気品があり、古くから日本人に愛されてきました。だが、それだけによく盗られるので、この欄に登場させたものかどうか、迷った花のひとつです。日当たりの尾根筋、雑木林の中、或いは林道の脇などに静かに佇むように咲いています。春の季語。花言葉は「飾らない心」「素朴」。

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センボンヤリ(千本槍)
キク科センボンヤリ属

花期は4月

 艶「えん」を競う花々とは無縁のように、センボンヤリが階段の隙間や足元に咲いています。小さくて可憐な花に似つかわしくない名前ですが、円の中の秋花と種子の束を見てください。江戸時代の大名行列の毛槍に似ているでしょう。秋花は開花しないまま(閉鎖花)に結実する不思議な植物。

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ショウジョウバカマ(猩猩袴)
ユリ科ショウジョウバカマ属

花期は3月~5月

 ウグイスのさえずりが上手くなる頃、祐泉寺から岩屋峠への谷すじに白とピンクの花を咲かせます。葛城山の大群落より半月以上開花が早く、最初の花を見つけた時は、宝物でも探し当てたように心が浮き立ち、思わず「どこかで春がーー」と口ずさんでいます。名は能の「猩猩」で舞う霊獣の姿からの連想だそうです。

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チゴユリ(稚児百合)
ユリ科 チゴユリ属

 「名は体を表わす」の好例。高さ15㎝~30㎝の可愛い姿を初春、登山道の各所で見せてくれます。春を迎える悦びをつつましく表現する花、その花を虫たちが訪れ、鶯ももうためらうことなく、力強く囀っています。もうすぐ木々が一斉に芽生えを始めます。さあ、春の息吹を浴びに野山に出かけましょう。

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スズシロソウ(蘿蔔草)
アブラナ科 ヤマハタザオ属

花期は3月~5月

 すずしろ(蘿蔔)はダイコンの事。花が似るのが名の由来。祐泉寺から馬の背への谷すじ道で傾斜地や岩の傍に咲きます。「すずしろ」の語感からの命名かと思うほど、清新で可憐な花。その小さな花を寒風の中で立ち上げる様子が、春を待望する私たちの心に共感の念を呼び起こすのでしょうか。

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クサイチゴ(草苺)
バラ科キイチゴ属

花期は3月~5月

 草のように見えるのでこの名になりましたが、他のキイチゴ類と同じく「木」です。直径4cm程の白い花はよく目立ち、見ると初夏に稔る赤いつぶつぶの実を連想して、生唾が出てきます。苺は、野山で摘んで喉をうるおすのが何よりの御馳走ですが、ジャムも美味、いちご酒もおいしいそうです。

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ニワトコ(庭常・接骨木)
スイカズラ科ニワトコ属

花期は4月前後

 まだ冬枯れの雑木林で真っ先に芽を出します。うすく紅を帯びた浅葱(あさぎ)色の柔らかな膨らみは、それだけでも生命の躍動を予感させますが、やがて縦横に伸ばしたしなやかな枝枝に淡緑色の葉と淡黄色の小さい花をたわわにつける様は、他者に先駆けて春を満喫しているようで、見ていて頬が緩みます。名は「造木(ミヤツコキ)」からの転訛説があります。骨折の薬なので接骨木。

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カンスゲ(寒菅)
カヤツリグサ科スゲ属

花期は3月~4月

 寒い時期青々とした葉を茂らせるのでこの名に。写真の植物の正式名称はアオミヤマカンスゲ。まだ春の気配の乏しい谷筋の登山路でいち早く花を見せてくれます。厳しい寒気の中にスックと伸びた淡黄色の花穂は小気味よく、そして可愛いものです。

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ツバキ(椿)
ツバキ科ツバキ属

 山頂近くの遊歩道周辺には赤、ピンク、白など植えられていますが、山林の中にはヤブツバキがいたる所で自生しています。光沢のある濃緑の葉に真紅の花を見ると「艶葉木(つやばき)語源説」に納得してしまいます。花期は長く初冬から春までですが、春の季語。落花は花全体がまとまって落ちます。ボトッ!。    

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ウメ(梅)
バラ科サクラ属

花期は2月~3月

 雌岳をめぐる遊歩道の傍らに花を咲かせます。厳寒の中でパッチリと開く花はよく目立ち、あたりに漂う甘い香りは将に馥郁、花に集う小鳥たちの鳴き声と一緒に五体に染み渡って身体も心もかろやかにしてくれます。名前は中国語の梅(メイ)に「う」を付け、更に転訛した、というのが有力説です。     

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アセビ(馬酔木)別名アシビ、アセボ
ツツジ科アセビ属

花期は3月~5月

 自然林の中に自生しています。初冬から赤い花芽を準備し、早春白い壷状の花をびっしり付けて見る人を励まします。雌岳山頂にはピンクのもあります。馬もよろけると言われる有毒植物ですが、奈良公園の鹿が最近食べ始めたというのは本当でしょうか。古くからアシビと呼ばれ、「食すると足がなえるので足廃(し)び」語源説が有力のようです。       

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ダンコウバイ(檀香梅)
クスノキ科クロモジ属

花期は3月~4月

 冬ざれの雑木林の斜面で、芽生え前に黄金色の花を多数咲かせ、いい香りをあたりに漂わせます。朝日に輝くこの花の集団に出逢うと、春への期待が一気に膨らみ、厳寒の中でも身体がほぐされるように感じます。最も早い春告花。檀香はビャクダンのこと、香りがあることからのネーミング。

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サザンカ(山茶花) 
ツバキ科ツバキ属

花期は晩秋~翌年2月

 冬に咲く花の代表格。ツバキと違って花びらがばらばらに散ります。この花が咲き始めると冬の到来を実感しますが、同時に、より強く春への想いが募ります。日本原産種なのに、なぜか中国語の「山茶花」をあて(誤用)、音読みのサンザカからサザンカに転じたそうです。花言葉は「困難に打ち勝つ」。

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キチジョウソウ(吉祥草) 
ユリ科(他説あり)キチジョウソウ属

花期は晩秋

 「めでたいことがあると咲く」と信じられてこの名前に。細長い葉が束になって茂り、その陰でひっそりと咲くので目立ちませんが、よく見ると美しい花。花茎は赤紫色で花は白。當麻の登山口にある大龍寺の植え込みで咲いていましたが、今年は見ません。一昨年大阪側山麓で群生していました。

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ヤクシソウ(薬師草) 
キク科オニタビラコ属

花期は9月~12月

 晩秋に咲く黄色い花ですが、前号のシマカンギクと比べると地味。陽が照ると開花し、開花後はうなだれるように下を向くからでしょうか。茎や葉を傷つけると白い乳液が出ます。種のなまえは、葉が薬師如来像の光背に似るからとのこと。若葉はゆでて食べられるそうです。

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二上山に咲く花々 ⑳
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シマカンギク(島寒菊)  
キク科キク属

花期は10月~12月

 二上山は今落葉の季節、足元では枯葉色がひろがります。その中で小さいながらも明るい黄金色のこの花はハッとするほどの彩り。岩屋峠の崖地その他に咲いています。草丈30cm~70cm。この花を油に浸して薬にしたので、油菊とも呼ばれています。ぜひ観て欲しい花、大切にしたい花です。

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二上山に咲く花々 ⑲
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ヤマハッカ(山薄荷)  
シソ科ヤマハッカ属

花期は9月~11月

 岩屋峠とその周辺の遊歩道の崖地に、群れて咲いています。ヒョロリとした茎に紫色の小さい花を沢山着けて長い間咲き続けます。尋ねられてこの名を告げるとほとんどの人が鼻を近づけますが、ハッカの香りはありません。茎の断面はシソ科の特徴である四角形をしています。

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二上山に咲く花々 ⑱
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リュウノウギク(竜脳菊)  
キク科キク属

花期は10月~12月

 竜脳はボルネオ島などでリュウノウジュの樹脂から採れる香料、それに似る香りを持つのでこの名に。葉を揉んで嗅いでみて下さい。樟脳に似た香りがします。頂上付近登山道の崖地に咲き、くっきりした美しさは茶褐色の多くなる晩秋の山で浮き立つように目立ち、つい微笑みかけたくなります。

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二上山に咲く花々 ⑰
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テイショウソウ(禎祥草か?)   
キク科モミジハグマ属

花期は9月~11月

 作家の故田中澄江さんは、著書「花の百名山」の中で「二上山の花」としてテイショウソウを挙げています。分布が限られていて田中さんも初めて見たそうです。写真のように花も独特ですが、葉も形状・色・斑紋など特徴があり、印象に残ります。登山道傍の崖地や雑木林に咲いています。

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二上山に咲く花々 ⑯
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オケラ(朮)   
キク科オケラ属

花期は9月~10月

 前号のコウヤボウキに似ていて、花期も咲く場所もダブるので、よく戸惑いますが、両者共花の少ない時期に咲くので、特別の親しみを感じます。根はビャクジュツ(白朮)と言って漢方の健胃薬、若葉は食用。京都八坂神社のおけらまつり(朮祭)ではこの植物を焼いて火を造ります。。

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二上山に咲く花々 ⑮
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コウヤボウキ(高野箒)   
キク科コウヤボウキ属

花期は9月~10月

 二上山の頂上部の道端に咲いています。しなやかで強靭な幹や枝を使って高野山では箒を作り、売り歩いたことからの命名。また正倉院御物の玉箒も材料はこの植物だそうです。多くの植物が花期を終える頃に咲き出すので、ことさら秋の深まりを実感させる花です。

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二上山に咲く花々 ⑭
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イヌホウズキ(犬酸漿)   
ナス科ナス属

花期は7月~10月

 全国のみならず世界で広く分布。日本には古くに田畑の雑草として入ってきたと考えられています(史前帰化植物)。道端にも咲いていますが二上山への林道脇に茂っています。名は「役立たずのほおずき」の意味で、全草有毒・要注意の草ですが、薬草としても活用されているそうです。

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二上山に咲く花々 ⑬
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センブリ(千振)   
リンドウ科センブリ属

花期は8月~11月

 有名な胃薬。千回振り出してもなお苦いそうです。花はキリリとして美しく、思わず立ち止まって見惚れます。10~20cmほどの大きさで、よく株ごと無くなるので、その場で氏名不詳の盗掘者を思い切り罵倒して周囲を驚かせます。日本人の昔からの民間薬、大切にしたい植物です。

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二上山に咲く花々 ⑫
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アキノキリンソウ   
キク科アキノキリンソウ属

花期は8月~11月

 秋、どこにでも咲く黄金色の美しい花。同色で美しいキリンソウ(ベンケイソウ科)が初夏に咲くのに対し、秋に咲くのでこの名に。別名アワダチソウ、花の咲き方が泡立ちに似ると言い、同属の帰化植物セイタカアワダチソウの名の由来となりました。しばしば混同されています。薬用、食用。

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二上山に咲く花々 ⑪

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ツリガネニンジン   
キキョウ科ツリガネニンジン属

花期は8月~10月

 晩夏から初秋、ふと気付くと路傍に咲いています。草原や畑の畦、ため池の土手などに自生しますが、淡いブルーの釣鐘型の花は色も形も可愛く、よく手折られます。根が人参に似て薬用に、若葉は山菜として食べられます。しかし急速に減っています。みんなで大切に、大切に。秋の季語。

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二上山に咲く花々 ⑩
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ツルリンドウ(蔓竜胆)   
リンドウ科ツルリンドウ属

花期は8月~10月

 晩秋に実る楕円球の赤い実は光沢があってよく目立ちます。この宝石のような実をクリスマスリースの飾りにするのは子ども達だけの特権。実(み)に比べると花は目立ちませんが、かわいいリンドウです。つるになって草木にからみ、幾つもの花や実を連ねているのも、秋の山の風物詩。

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二上山に咲く花々 ⑨
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ヤマジノホトトギス(山路の杜鵑草)  
ユリ科ホトトギス属

花期は8月~10月

 独特の形をしたこの花に出逢うと、そう「もう秋」なのです。登山路の各所でいつの間にか足元に咲いています。花にある赤紫色の斑紋が鳥のホトトギスの胸紋に似るので、そのまま植物名に。「鳥が先か、花が先か」と疑問を呈している方も居ますが果たして? ホトトギス 鳥は夏の、植物は秋の季語。


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二上山に咲く花々 ⑧
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タカサゴユリ(高砂百合)  
ユリ科ユリ属

花期は8月~秋

 台湾原産。栽培用に移入されて野生化。ものすごい勢いで全国にひろがっています。種子を風でとばしてひろがるのです。「侵入植物」として嫌がられていますが、持ち込んだのは人間で、植物に罪はありません。と思いつつも、崖地に群れて咲くと「ついに二上山もか」と舌打ちしてしまいます。



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二上山に咲く花々 ⑦
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ナツフジ(夏藤)  
マメ科ナツフジ属

花期は7月~8月

 二上山に向かう車道や登山道で、盛夏、人の頭上で咲き、路上に花を散らします。土用藤とも呼ばれ、この花が咲き始めると炎暑を覚悟し、散り落ちるのを見て「暑さももう少し」となぐさめられるのです。花の色がクリーム色で、地味なのも親近感を持たせるのでしょう。夏の季語。



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二上山に咲く花々 ⑥
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カラスウリ(烏瓜)
ウリ科カラスウリ属

花期は7月~9月

 カラスウリの赤い実を見た人は多いでしょうが、花を見た人は少ないのでは? 白いレース編みの花弁はいかにも妖艶ですが、夜人知れず開き、朝には閉じてしまうのです。夜この花を訪れるのはスズメガ、長い口吻で蜜を吸いますが、蛾にはこの花がどんなふうに見えるのでしょうか。



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二上山に咲く花々 ⑤
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クララ(眩草、苦参)
マメ科クララ属

 クララと聞くとハイカラなイメージを持ちますが、地味な花です。日当たりの良い草原や崖地に自生しています。根を噛むとクラクラするほど苦いのがネーミングの由来。試しに噛んでみようなどと思わないで下さい。この植物は薬として活用されますが、強い毒性は量を間違えると死にいたる程だそうです。薬と毒は紙一重ですから。


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二上山に咲く花々 ④
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ホタルブクロ(蛍袋)
キキョウ科ホタルブクロ属

 名前の由来に二説。一つは蛍を花に入れて遊んだ、二つ目は火垂(ほた)る袋と呼ばれた提灯(ちょうちん)に似るから。どちらも頷(うなず)かされます。
 夕刻の下山路で、路傍に咲くこの花に出逢うとホッとします。足元を照らしてくれるかと思うのでしょうか。花言葉は愛らしさ、正義。


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二上山に咲く花々 ③
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オカトラノオ(丘虎の尾)サクラソウ科
(新分類ではヤブコウジ科)オカトラノオ属

 登山道、遊歩道の日当たりのよい場所に咲いています。長い花穂が曲がって垂れ下がり、それを虎の尻尾に見立てての命名。
 群生地で純白の花穂が波のように風に揺らぐさまは涼感たっぷり、汗も疲れも、そしてストレスすらも吹っ飛んでしまいます。貴方も一緒に登りませんか。

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二上山に咲く花々 ②
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ハンゲショウ(半夏生) 
 ドクダミ科ハンゲショウ属

 岩屋峠の下の岩屋に保護されて咲いています。半夏(はんげ)は夏安居(げあんご・僧の屋内夏修行)の中日(太陽暦では7月2日頃)、この頃に開花するのでこの名が付けられた、と言うのが有力な説。花の傍の葉が白化するのは花を目立たせるための進化と考えられています。片白花とも呼ばれます。


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二上山に咲く花々 ①
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ササユリ(笹百合) ユリ科ユリ属

 最盛期は6月ですが、二上山に咲く花の代表格。気品があって庶民的、その感じが多くの人をひきつけます。困るのは盗掘とそれへの怒りからか花を摘み取る行為。
 人々はこの花の出現を心待ちにし、蕾のふくらみ、白からピンクへの色づき、そして満開から衰えまでを見とどけてから、翌年の再会へと想いをつなぐのです。

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