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二上山だより

「続・二上山に咲く花々」の連載開始
 4年前、約一年間に亘って奈良民報紙上に連載していただいた「二上山に咲く花々」は、その連載中から有り難いことに好評をいただき、その後その連載を一冊にまとめた「写真集」も短期間に売り切れ、多くの方にご愛読をいただきました。
 しかし残念なことに多くの花を割愛せざるを得ませんでしたが、このほどその割愛分を「続・二上山に咲く花々」シリーズとして、同じ奈良民報で連載していただくことになりました。
 第一回は「ヤブツバキ」で正月号に掲載されましたが、編集の都合で2回目以降は4月からの掲載になります。掲載され次第、当ホームページにも転載いたしますので、ご感想、ご批判をいただければ幸いに思います。

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続・二上山に咲く花々 50

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写真は澤木仁さん

キキョウ(桔梗)
    キキョウ科キキョウ属

 秋の七草の一。古くには「あさがお」と呼ばれたそうです。初秋、草地で青紫色の美しい花(5㎝ほど)を開いて登山者を喜ばせます。最近めっきり少なくなり、ここに載せるかどうか迷いましたが、連載の節目を飾る花として登場してもらいました。この花は雄しべと雌しべの成熟時期がずれていて、自家(花)受粉を避ける仕組みになっています。

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続・二上山に咲く花々 49

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写真は澤木仁さん

ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)
     タデ科イヌタデ属

 湿り気のある明るい場所に自生。花期は5~10月と長く、白とピンクの花は可愛らしい。三角形の葉と角(稜)のある茎が特徴ですが、そこに鋭いトゲがはえており、それが痛いのでこの名になったとのこと。それにしてもひどい名前ですね。現代の社会状況に照らしても問題ありで、植物学会が勇断を下して、和名を変更すべきだと思いますね。

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続・二上山に咲く花々 48

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写真は澤木仁さん

キダチコマツナギ(木立駒繋ぎ) 
 マメ科コマツナギ属

 二上山でも外来植物は少なくなく、その多くは人間が持ち込んだもの。この花も中国原産とされ、林道法面(のりめん)緑化のために植えられたものでしょう。 
 在来種のコマツナギが30㎝位なのに、この種は2m超となり、見るからに繁殖力旺盛。両者ともピンクの花は可愛らしいのですが、長く伸びる茎は「馬を繋げる」と言われる位強靭です。花期は夏から初秋。

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続・二上山に咲く花々 47

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写真は澤木仁さん

ワレモコウ(吾亦紅、吾木香)
バラ科ワレモコウ属

 2017年10月の総選挙では、自らの信条・理念を投げ捨てて改憲派(希望の党)に身を売る政治家が続出しました。その時、私はなぜかこの花を愛おしく思い出していました。
 秋色深まる中、静かだが毅然として花であることを主張しています。花期は8~10月。色も形状も「桑の実のよう」(岩田重夫氏)。円筒形の花序を枝先に着けて多くの花を咲かせますが、花弁はなく、4枚の萼片の色がこの色なのです。薬草。
 人情味あふれる時代小説で江戸庶民の暮らしや哀歓を描く女流作家・宇江佐真理さんは短編「吾亦紅さみし」の中で、登場人物(年配女性)に次のように語らせています。「吾亦紅は茶道の花として広く使われています。地味な花色が茶人に好まれるからでしょう。しかし、その名の由来は野山に咲く姿が吾(自分)を主張しているように見えるところからきております。吾も亦、紅であると」と。

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続・二上山に咲く花々 46

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写真は澤木仁さん

ヤマシロギク(山白菊)
キク科シオン属

 花期は9~11月。花が少なくなる秋、二上山でも日当たりのよい場所で花を開き、登山道を飾ります。高さは50~80cm。花は直径2cmほど。
晩秋に咲く野菊の仲間はいずれもよく似ており、しかも交雑種もあって区別が難しく、さらに名前も紛らわしくて、尋ねられても困ってしまうことがしばしばです。

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続・二上山に咲く花々 45

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写真は澤木仁さん

フジウツギ(藤空木)
フジウツギ科(新分類ではゴマノハグサ科)
フジウツギ属

 何年か前、二上山雌岳西側山腹で咲き誇るように花を着け、その名を何人もの人から尋ねられました。その後見なくなったのですが、昨年9月南に隣接する岩橋山との境の数カ所で咲いていました。
明るい場所に自生する小低木。6~9月ピンクの小さい花を房状にたくさん咲かせます。その様子と色が藤に似るからこの名に。ブッテリアと呼ばれる花もこの仲間。

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続・二上山に咲く花々 44

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写真は澤木仁さん

フジバカマ(藤袴)
キク科フジバカマ属

 秋の七草のひとつ。奈良時代に中国から渡来したものとされていますが、在来種説もあります。庭にもよく植えられていますが、野山でも自生していて、花期は8~11月、草丈1~1.5mで、枝の先に淡紫紅色の小さな花を多数咲かせます。
旅をする蝶・アサギマダラが吸蜜する花の代表格。漢方では薬とされていますが、有毒なので要注意。




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続・二上山に咲く花々 43

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写真は澤木仁さん

アキノタムラソウ(秋の田村草)     
シソ科アキギリ属

 夏から秋にかけて長い間、二上山のあちこちで咲き続けます。茎はシソ科の特徴を示して四角。草丈は20~80cm、まっすぐ茎を立ち上げ、長い穂状の花序を伸ばして、1㎝くらいの薄紫色の花を数段、輪状に咲かせます。
◯◯田村草という植物はいくつかありますが、その名の由来・意味は不明とのこと。



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続・二上山に咲く花々 42

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写真は澤木仁さん

キンミズヒキ(金水引)
    バラ科キンミズヒキ属

 この花も水引の名が付きますが、ミズヒキとは別種です。花期は8~10月、登山路の端から長い(80㎝にも)茎を伸ばして黄色い花(直径1cm)を沢山咲かせます。花は5弁でパッチリと可愛いのですが、花のあとに出来る実が鉤のあるトゲを持っていて、衣服に付着するので、思わず敬遠してしまいます。


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続・二上山に咲く花々 41

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写真は澤木仁さん

ミズヒキ(水引)
   タデ科イヌタデ属 

 水引は贈答品を結ぶ飾り紐。その水引を連想させるのでこの名に。8~10月二上山の至る所で見かけます。この花を見ると夏から秋への移ろいを実感します。7~80㎝の細い枝をしなやかに伸ばして、その枝に小さい花を点々と咲かせます。花の上半分は赤、下が白で、風に揺らぐ様子は夏には涼しさを、秋には儚さを感じさせます。



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続・二上山に咲く花々 40

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写真は澤木仁さん

ツルニンジン(蔓人参) 
  キキョウ科ツルニンジン属 

  ツル性で根が朝鮮人参に似ているそうです。別名のジイソブは「老人のそばかす」の意。花弁の斑点をそばかすに見立てたもの。 
今年は3か所で花を見せてくれました。花期は8~10月
 花は長さ3.5㎝くらいの太い釣鐘型、外側は白く、内部は暗紫色模様が出来、褐紫色の斑点があります。薬とされ、ツルニンジン酒にも。

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続・二上山に咲く花々 39

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写真は澤木仁さん

イワガラミ(岩絡み)
     ユキノシタ科イワガラミ属

 樹木などに絡んで這い上がり、5~7月頃花を咲かせてよく目立ちます。小さい両性花を多数固めて咲かせ、それを囲むように白い卵形の装飾花を並べます。アジサイ属のツルアジサイと見間違えやすいのですが、装飾花が写真のようにこの種では一枚ずつ、ツルアジサイのは3~4枚で構成されています。

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続・二上山に咲く花々 38

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写真は澤木仁さん

リョウブ(令法)
     リョウブ科リョウブ属

 雑木林の中でよく見かける小高木。7~9月ちいさい白い花を枝先に円錐状にたくさん着けます。樹皮ははがれやすく、そこがまだら模様になって、よく目立ち、庭木などにも使われます。若葉は昔から食用となり、飢饉の際の救荒食物として法令によって植樹されたのが、名前の由来とされています。

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続・二上山に咲く花々 37

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写真は澤木仁さん

クマノミズキ(熊野水木) 
      ミズキ科ミズキ属

  葛城市當麻の登山口にある大龍寺から祐泉寺に向かって登ると、谷川の崖の上に10m超かと思われる大きなクマノミズキが花を咲かせます。花期は6~7月。枝々の先に黄白色の小さな花を密集させてつけ、よく目立ちます。熊野地方の名が付いているように近畿に多く、ミズキは水分を多く含むから。

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続・二上山に咲く花々 36

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写真は澤木仁さん

マユミ(真弓)
 ニシキギ科ニシキギ属

 雑木林の林縁などに自生し、5~6月頃小さい(直径8ミリ)淡緑色の花をまばらに咲かせますが、その形が十字形です。秋にみのる果実は淡紅色でよく目立ちますが、熟すと果皮が割れ、鮮やかな朱い種子が現れてさらに目立ちます。材質はしなやかで強く、日本の弓の材料にされて、それが名前の由来となりました。

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続・二上山に咲く花々 35

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写真は澤木仁さん

コバノガマズミ(小葉蒲染)
  スイカズラ科ガマズミ属 

 雑木林の中で自生する落葉小低木(2~4m)。名は葉の小さいガマズミという事ですが、ガマズミの語源がはっきりしません。4~5月頃、枝の先に散状花序を出し、小さい(直径5mm)白い花をたくさん咲かせます。秋には紅葉し、9~10月ごろ、球形の真っ赤な実を着けます。庭木や公園の植え込みにも使われます。

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続・二上山に咲く花々 34

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写真は澤木仁さん

ツクバネウツギ(衝羽根空木) 
 スイカズラ科ツクバネウツギ属

 日当たりのよい雑木林に自生する落葉低木。高さ2メートルくらいに。花期は4~6月。枝の先に二つの花を咲かせ、花は白または淡黄色の鐘状漏斗形(2~3cm)で下の唇弁に黄色の網目模様があります。花の基部に5片の咢(がく)片があり、これが茶褐色になってよく目立ち、これを付けた実が正月の羽根つきの羽根に似るのが和名の由来。

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続・二上山に咲く花々 33

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写真は澤木仁さん

オオアリドオシ(大蟻通)
アカネ科アリドオシ属

  画像にも出ていますが、枝に着いている細長い鋭いトゲが蟻をも貫くようだと言うのが名前の由来です。二上山では渓流沿いの林の縁に点々と自生しています。高さは1mほどの常緑小低木。5月頃先端が四裂した白い筒状の小さな花を2輪並べて咲かせます。冬、赤い丸い実が目立ちます。
 二上山では同じ科のツルアリドオシがよく似た小さい花を各所で咲かせます。

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続・二上山に咲く花々 32

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写真は澤木仁さん

ソヨゴ(冬青)  
モチノキ科モチノキ属

 雑木林の中で、6月頃に小さい(直径4ミリ)白い花をたくさん咲かせる常緑高木。風にそよいで音を立てるのでこの名に。 
 雌雄異株で、雌木は秋、直径7~8ミリの赤い球形の実をぶら下げて、小鳥たちに提供します。幹の材質は固くて、床柱やそろばんの玉の材料とされます。

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続・二上山に咲く花々 31

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写真は澤木仁さん

ヤブミョウガ(薮茗荷) 
ツユクサ科ヤブミョウガ属

  林の下の少し湿り気のある場所に自生し、茎は1メートル近くにもなり、白い花を着けるのでよく目立ちます。花は両性花と雄花とがあり、写真で黄色い雄しべが見えるのが両性花です。
 ミョウガによく似た葉を着けますが、ミョウガはショウガ科で、花も全く違っていますし、ヤブミョウガの葉はざらついていますので区別できます。
 秋になるヤブミョウガの実は緑色から紫紺色へと変わり、光沢を放ちます。若葉は塩ゆで、炒め物、汁物として食べられるそうです。
 根でも増えるので、しばしば群落をつくります。

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続・二上山に咲く花々 30

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写真は澤木仁さん

ネズミモチ(鼠黐)  
モクセイ科イボタノキ属 

  庭や公園によく植えられているおなじみの樹木ですが、二上山でも雑木林の中で自生し、5メートルほどの高さになります。6月ごろ枝先に白い小さな花をたくさん着けて、よく目立ちます。晩秋にみのる実は黒紫色で1cmほどの楕円球形になり、これがネズミの糞に似、葉がモチノキの葉に似るので、この名になったそうです。花にはハナムグリなどの昆虫が良く集まり、実は野鳥たちの大好物です、そして人間は昔から漢方薬としても利用してきました。
 葉がツバキの葉にも似ているので「タマツバキ」ともよばれています。

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続・二上山に咲く花々 29

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写真は澤木仁さん

ウラシマソウ(浦島草)
サトイモ科テンナンショウ属 

 写真で長いひものような物がありますが、これは花の一部で「付属体」と呼ばれています。これを浦島太郎の釣り糸に見立てての命名です。中央の太い柱のようなのが花ですが、花弁は無く、濃紫色の覆い(仏炎苞)に包まれています。
 林下で自生し4~5月頃花が咲きますが、小さい個体は雄花を咲かせ、力がつくと雌花を咲かせる、いわゆる性転換をすることで有名です。(性転換はテンナンショウ属に共通)

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続・二上山に咲く花々 28

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写真は澤木仁さん

オオチャルメルソウ(大哨吶草)
ユキノシタ科チャルメルソウ属

 写真の花の形が面白いでしょう。果実も面白く、その形が楽器のチャルメラ(チャルメルとも)に似ているからこの名に。谷筋の登山道の湿った所に自生していて、花期は4~6月。
 チャルメラと言えば屋台のラーメン屋さんが、客寄せに吹いていたのを、そのメロディーと共に思いだします。「哨吶」はもともと中国の楽器ですが、江戸時代、長崎に来たポルトガル人が中華街で使われていたこの楽器を、自国の楽器「チャルメラ」に似るので、そう呼んだことに由来する言葉だそうです。
 それにしてもとても読めませんね。

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続・二上山に咲く花々 27

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写真は澤木仁さん

ヒメハギ(姫萩)
ヒメハギ科ヒメハギ属

 花期は4~7月。この頃山道を歩いていて、この花を見つけると「こんなとこにも咲いていたのか」と呼びかけたくなります。日当たりのよい階段の隙間とか尾根道の傍にひっそりと咲きます。萩の花に似た小さな花を咲かせるのでこの名に。細く固い茎が地面を這うように拡がって花を着けますが、花は5~7ミリと小さく、紅紫色で可愛らしい。下の花弁の先が房状になるのが特徴です。

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続・二上山に咲く花々 26

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写真は澤木仁さん

ナツハゼ(夏黄櫨)
ツツジ科スノキ属

  尾根筋の日当たりのよい場所に自生する落葉低木。夏、ハゼの木のように赤く紅葉するのでこの名に。
 5~6月頃枝先に赤みを帯びた淡黄褐色の小さい(5cmほど)花を下向きにたくさん咲かせます。丸い鐘形の花は花弁の先が丸く反り、飾りのようになって、とても可愛らしい。
 初秋になる実は球状で黒褐色に熟し、食べられます。



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続・二上山に咲く花々 25

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写真は澤木仁さん

ブタナ(豚菜)
キク科エゾコウリゾナ属

  昭和初めにヨーロッパから来たとされる外来植物。フランス語の「豚のサラダ」の和訳が名前の由来。
 葛城市当麻の二上山登山口の傍らに鳥谷口古墳(大津皇子の墓と言われる)があります。初夏、この古墳の丘陵斜面一面にブタナが咲き誇ります。この植物の繁殖力はすさまじく、以前北海道の空港をこの花が黄色に染めているのを、空から見たことを思いだします。
 タンポポ(キク科タンポポ属)に似ていますが、ブタナは茎が長く(50~60cm)、その茎に複数の花(タンポポは花茎に花ひとつ)を咲かせます。


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続・二上山に咲く花々 24

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写真は澤木仁さん

シャクジョウソウ(錫杖草)
ツツジ科シャクジョウソウ属
(以前はイチヤクソウ科シャクジョウソウ属)

 初夏~夏にかけて、うす暗い林の地面に姿を現します。ギンリョウソウと同じく「腐生植物」と呼ばれて、葉緑素を持たず、生活を菌類に依存しています。茎も花も淡い黄褐色で、下を向いて咲く姿をお坊さんや修験者などがもつ杖(錫杖)に見立てての名前です。  
ここしばらく、二上山では見かけませんが、昨年ギンリョウソウが各所で出現したので、今年出会えそうな予感がしています。

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続・二上山に咲く花々 23

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写真は澤木仁さん

ネジキ(捩木)
ツツジ科ネジキ属

 日当たりのよい雑木林に生えている落葉小高木。幹がねじれているので、この名に。5~6月頃、横に伸びる枝の葉のわきに筒状つぼ型の小さい(1センチまで)白い花をびっしりと列状にぶら下げます。花期には地面にたくさんの花を散り敷くので、下を向いて歩いていても、すぐに分かります。枝葉は有毒。

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続・二上山に咲く花々 22

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写真は澤木仁さん

ソクシンラン(束心蘭)
 キンコウカ科ソクシンラン属
(従来はユリ科ソクシンラン属)

 ランに似た葉の束の中心から花茎を伸ばすので、この名になりました。高さは30~50㎝ですが、葉も花茎も細くて小さく、そして花も小さいので、目立たなくて、登山道の路傍や足元に咲くのに、多くの人が気づかないまま通り過ぎます。花期は4月から6月。
 花は壺状で白ですが、花の先端は6裂し淡紅色を帯びて可愛ら
しい。

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続・二上山に咲く花々 21

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写真は澤木仁さん

ノギラン(芒蘭) 
 キンコウカ科ソクシンラン属
(従来はユリ科ノギラン属)

 日当たりのよい遊歩道や登山道の崖地に生え、夏(6月~8月)葉の横から棒ブラシ状にたくさんの小さい花を咲かせます。
一つ一つの花は上を向き、パッチリと可愛いのですが、黄緑色を帯びるクリーム色なので、地味です。葉は地表面に放射状に広がるロゼット葉で、ショウジョウバカマとよく似ていて紛らわしいのですが、二上山ではショウジョウバカマは早春に咲き、ロゼット葉の中心から花茎を延ばすので区別できます。

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続・二上山に咲く花々 20

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写真は澤木仁さん

ニシキゴロモ(錦衣)
ツツジ科ツツジ属

 春先、陽の当たる登山道の傍らにそっと咲いています。花の名を聴いた人は華やかな姿を想像するかもしれませんが、どちらかと言えば地味な小さい白い花です。ネーミングは葉の特徴からで、やや厚めの感じの長楕円形の濃緑の表面に紫色の筋が葉脈に沿って走り、裏面は紫がかった色になります。
 花の形が、同じ仲間のキランソウやジュウニヒトエに似ていますね。私にとっては、二上山の春を象徴する可愛い花の一つです。

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続・二上山に咲く花々 19

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写真は澤木仁さん

モチツツジ(黐躑躅)
ツツジ科ツツジ属

 ミツバツツジが花期を終える頃、モチツツジが淡紅色の花を咲かせます。花はミツバツツジより大きく、直径5cmぐらい。
 ミツバツツジと違って常緑。花冠は5裂し、上に伸びる花弁に赤い斑点が目立ちます。
 花の柄やがくなどから粘液を出してねばねばするので、この名前が付けられました。
 日本で古くから栽培され、多くの園芸品種が造られ、庭園を飾ってきました。


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続・二上山に咲く花々 18

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写真は澤木仁さん

ミツバツツジ(三葉躑躅)
ツツジ科ツツジ属

 四月ごろ、まだ葉の無い枝枝に鮮やかなピンクの花(直径3~4cm)をいっぱい咲かせます。
 この花に急かされるように、山全体が新緑を帯びはじめ、その両者のコント
ラストも又、登山者の心を和ませます。
 花が終わるころ、枝先に三枚の葉をひろげるのでこの名前になりました。

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続・二上山に咲く花々 17

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写真は澤木仁さん

ヤマハッカ(山薄荷)
シソ科 ヤマハッカ属

 10月ごろから、岩屋峠の崖側に花をひろげ始めますが、寒風が吹き始める頃になっても咲き続けます。シソ科特有の四角い茎ですが、長い花穂に青紫色の小さい花を数個ずつ数段に分けてつけ、その花が一度に開かずに、リレーしてゆくので、花期が長いのです。同じシソ科のハッカに似るので、この名をつけられたのですが、ハッカのような芳香は有りません。

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続・二上山に咲く花々 16

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写真は澤木仁さん

ノコンギク(野紺菊)
キク科シオン属

  いわゆる「野菊」と呼ばれる野生ギクの一種。登山道の路傍に群を作って沢山の花を咲かせます。周囲に伸びる舌状花は淡紫色、中央に丸く固まる管状花は黄色、合わせて直径2.5cm位の大きさです。この種の園芸種で濃紺の物を「紺菊」と言い、その野生種の意味での名前。伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の菊はこの花の事だとの説があります。近縁種で食用とされる「ヨメナ・嫁菜」とよく似ています。

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続・二上山に咲く花々 15

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写真は澤木仁さん

アキチョウジ(秋丁字)
シソ科 ヤマハッカ属

 夏の終わりから谷川沿いの崖地などに青紫色の細長い(2cmほど)花をつけます。花の形が丁字形だからこの名に。高さは60~90cm、花は同じ方向に偏って咲き、茎はシソ科特有の方形。この花も秋のおとずれをいち早く教えてくれる花で、見た目にも清々しい。 

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続・二上山に咲く花々 14

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写真は澤木仁さん

ヤブコウジ(藪柑子) 
ヤブコウジ科 ヤブコウジ属 

 常緑で、冬、実が真っ赤に熟すのでめでたいとされ、センリョウ、マンリョウと共に正月の飾りに使われます。従って季語としては冬。樹林帯に下草のように群れて自生する小低木。夏、白い花を下向きに咲かせます。別名十両。
ちなみに百両と呼ばれるカラタチバナも二上山に自生、別名一両のアリドオシはまだお目にかかりませんが、近縁のオオアリドオシが自生しています。

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続・二上山に咲く花々 13

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写真は澤木仁さん

オトギリソウ(弟切草)
オトギリソウ科 オトギリソウ属 

 夏から秋、登山道の明るい所で2cmくらいの黄色い花を咲かせます。高さは30~50cm。鎮痛、止血などの薬草。和名の由来は、この製薬法の秘密を洩らした弟を、怒った兄が切り殺したという伝説によるもの。葉にある黒点はその際の血しぶきだというおまけ付き。凄惨な種名由来とは対照的に花はパッチリと明るく、可愛らしい。花期は7~9月ですが、秋の季語。

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続・二上山に咲く花々 12

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写真は澤木仁さん

クサアジサイ(草紫陽花)
ユキノシタ科(最近の分類でアジサイ科説も)クサアジサイ属

 他のアジサイがすっかり花を終えた頃、谷川沿いの湿った場所に淡紅色の花を咲かせます。和名はアジサイに似た花を咲かせる草本の意。装飾花があります。高さは20~70cm。
この優し気な花を見ると夏から秋への移ろいを実感します。日本の固有種。
花期は8月~10月。

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続・二上山に咲く花々 11

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写真は澤木仁さん

コアジサイ(小紫陽花)
ユキノシタ科アジサイ属

 二上山には各種アジサイが植えられており、盛夏の陽射しの中で咲き誇っていますが、コアジサイは薄暗い樹林下で花を開きます。
他のアジサイと違って装飾花がありません。びっしりと集まった淡青紫色の花はつつましやかですが、木漏れ日を浴びた時、はっとするような美しさを見せ、「これだから山歩きはやめられない」と思わせるのです。

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続・二上山に咲く花々10
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写真は澤木仁さん

コウゾ(楮) (ヒメコウゾ)
クワ科コウゾ属

 この木も和紙の原料。樹皮の繊維は、長くて、強くてよく絡み合うので、紙の強靭さを保障します。二上山谷筋の明るいところで、長く細い枝をしなやかに伸ばして、花をぶら下げるように咲かせます。花期は4~5月。夏に実る実は甘いが口当たりは良くありません。
 ところで、和紙のもう一つの原料となるミツマタは自生していませんが、ふたがみパーク公園に植えられており、早春、甘く強い香りを漂わせます。

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続・二上山に咲く花々9
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写真は澤木仁さん

コガンピ(小雁皮)           
ジンチョウゲ科ガンピ属

 8月ごろ、二上山頂上部遊歩道の各所で白い花の塊を見せてくれます。ガンピと違って和紙の原料にはならないので「イヌガンピ」とも呼ばれます。人間の役に立たないからと「イヌ○○○」のネーミングは、植物に対しても犬に対しても失礼ですよね。
「人間中心思想がなせる哀しき所業」と言ったら、叱られるでしょうか。


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続・二上山に咲く花々8
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(写真は友の会山歩きクラブの澤木仁さん)

ガンピ(雁皮)
 ジンチョウゲ科ガンピ属

 和紙の優美さ、強さは世界中でつとに有名。各国で美術品の保存・修復にも使われており、国内では古代以来、学問・文化・芸術を支えただけでなく、生活用品に広く活かされて来ました。その和紙の原料の一つがガンピで、二上山の尾根筋に5月ごろ淡黄色の小さい花を咲かせます。この可愛らしい花の集まりを目にし始めると、春は終わりに近づきます。
ガンピは日本の固有種。

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続・二上山に咲く花々7
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カマツカ(鎌柄)
 バラ科カマツカ属

 5月ごろ、白く小さい花が固まって咲き、山林に初夏の雰囲気をつくりだします。
 木の材は固くて、丈夫で、折れにくいので、よく  鎌の柄を作ったそうで、別名の「ウシゴロシ」も牛の鼻に通す輪を作ったからとか、その輪を通す穴をあけるのにこの木を使ったからとか言われています。
 秋、葉は美しく紅葉します。又赤い実をたくさん着けます。良く庭木として植えられています。

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続・二上山に咲く花々6
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ガクウツギ(額空木)
 ユキノシタ科アジサイ属

 雑木林の林縁をこの花が白く縁取り始めると、山は夏への歩みを速めます。
 白い大きなのは、ふつう3枚の花弁状の額片から成り、「装飾花」と呼ばれる飾りで果実はできません。中央に固まっている多数の花は、はじめ淡黄緑色で後に黄色になりますが、この花に虫たちを呼び寄せる役割を「装飾花」が果たしていると考えられています。
 この花は、二上山はもとより、三重県の山でも、福岡県福智山でも、佐賀県樫原湿原でもよく咲いていました。

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続・二上山に咲く花々5
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ナガバモミジイチゴ(長葉紅葉苺)
 バラ科キイチゴ属

 野山で最も普通に見かける木苺。黄色く実る甘い実は子どもの頃の嬉しい食べ物でした。
 同属のモミジイチゴが東日本の本州に、本種が近畿以西にと分布が分かれています。
 種名は葉がモミジのように裂けるから。茎には固いトゲがあり、よく薮漕ぎをする私にとっては、難敵のひとつです。
 写真は 健生会友の会山歩きクラブ澤木仁さん。

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続・二上山に咲く花々4

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ミツバアケビ(三葉木通)
 アケビ科アケビ属

 アケビ属の3種(アケビ、ゴヨウアケビ、本種)が二上山で自生しています。いずれも落葉つる性。開花は4~5月、花序の先端に多数着く小さい花が雄花、二つの大きなのが雌花です。秋には甘い果肉を持つ楕円球形の果実を蔓にぶら下げます。
 実は熟れると皮が割れて果肉を露出させますが、この「開け実」が種名の有力な語源。漢字の「木通」はつるを切って吹くと空気が通るから。
 写真は 健生会友の会山歩きクラブ澤木仁さん

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続・二上山に咲く花々3

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シャガ(射干)
  アヤメ科アヤメ属

 人里に近い湿った林床に群生して咲き誇ります。大昔に中国から入ってきた史前帰化植物。花は目立つのに結実せず、なのに全国的繁殖、など同じ史前帰化植物のヒガンバナと共通の特徴を持っています。名は中国語の「射干」をシャガと読んだものですが、中国での「射干」はヒオウギの事で、この食い違いは古代における漢字導入時のミスだろうとされています。
 花期は4月~5月。  写真は健生会友の会山歩きクラブ 澤木仁さん

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続・二上山に咲く花々2
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タニギキョウ(谷桔梗)
  キキョウ科タニギキョウ属

 キキョウと聞けば夏から秋の花かと思いがちですが、タニギキョウが咲くのは春~夏。小鳥たちの囀りが本格化するころ、谷川べりに群れをなして白い小さな花を咲かせます。花も可愛く、茎や葉もみずみずしくて、小鳥や虫などの動物に食べられてしまうのではと余計な心配をしてしまいます。
 花冠の大きさ5~8ミリ。花期は4月~5月
 写真は 健生会友の会山歩きクラブ 澤木仁さん

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続・二上山に咲く花々1

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ヤブツバキ(薮椿)
  ツバキ科ツバキ属

 二上山にはヤブツバキが沢山自生しており、サザンカと共に冬の花の代表格。厳寒の中でも葉を茂らせ、その艶やかな深緑に、真紅の花びら、黄色の葯と、コントラストも鮮やか。冬を耐えて春の到来を待つ人々の共感を呼び、「椿」の字をあてられたのはそのせいでしょうか。 

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