続・続・二上山に咲く花々 50
ミヤマウズラ(深山鶉)・・ ラン科シュスラン属
廃道になって荒れた道を歩いていて、崖の下の日当たりのいい緩斜面で出会いました。翌日澤木さん(故人)と再訪し、撮影すると共にあたりを探すと数株の花を見つけました。
以後毎年の出会いを楽しみにしていましたが、その後道が閉鎖され、一層荒れてしばらく会えていません。今年の夏にでも出会えないかと思っています。
写真でも見られますが、光沢のある葉の模様が魅力的で、変わった模様の株は珍重されるとのこと。また、この葉の模様が野鳥のうずらの羽根の模様に似るというのが、種名の由来です。
花期は8月~9月頃、小鳥が羽根を広げたような形の花を花茎の一方に偏って咲かせます。
希少種ゆえ、大切にしたい植物です。他府県では絶滅危惧種に指定されて保護されているところも出ています。
続・続・二上山に咲く花々 49
チャノキ(茶の木)・・ ツバキ科ツバキ属
私たちの暮らしに欠かせない飲料水・お茶。世界中で飲まれ、薬としても使われています。
日本には古くに持ち込まれ、平安末期から活躍した僧・栄西が中国から持ち帰ったものが栽培されるようになったとのこと。
江戸末期から明治にかけて、盛んに輸出され、現在でも輸出の重点品目とされています。
二上山では、各所でみかけますが、おそらく山中に多く在ったといわれる僧房で栽培されていたものが野生化したのではないでしょうか。
花期は晩秋。10月~12月。写真のように丸くて白い花を下向きに咲かせます。
続・続・二上山に咲く花々 48
キチジョウソウ(吉祥草)・・ キジカクシ科キチジョウソウ属
11月13日、香芝市の上之池登山口から登り始めました。新池横の分岐・銀峯へと向かう路の足元に一株のキチジョウソウの花が咲いていました。そうです、他の花々が姿を消している今頃、可憐な花を見せてくれるのです。このルートでは初めての出会いでした。
キチジョウソウはこのシリーズの初期にも取り上げ、澤木さんの写真集「二上山に咲く花々」にも掲載されていますが、嬉しくて、ここに再登場してもらいました。
「いいことがあると咲く花」との言い伝えがあり、この日は晴れ晴れした気分で歩きました。
別のルートでの帰途、立ち寄ってみると、小さな群落をなして、10株ほどが花をつけているのです。
當麻大池~初田川公苑からの道では、大龍寺上の竹林の中に群落があり、双方とも11月いっぱいは楽しめそうですね。
続・続・二上山に咲く花々 47
ゲッケイジュ(月桂樹)・・ クスノキ科 ゲッケイジュ属
二上山雄岳山頂には、葛木座二上神社があり、高いブロック塀に囲まれたその社殿の中に、ゲッケイジュが植えられています。
近年まで、そばの雑木林の中にも生えていて、煮込み料理の香り付けにと少量の葉を持ち帰る人もいました。
地中海沿岸地方原産のこの植物が日本に入ってきたのは明治期とされ、その際中国語の訳語「月桂樹」を音読みにして和名としたようです。
常緑広葉の中高木。花期は4~5月。
芳香のある枝葉で編んだ月桂冠はスポーツ勝者や優れた詩人に冠せられ、桂冠詩人の言葉もここから生まれています。
続・続・二上山に咲く花々 46
ヤブラン(藪蘭)・・ キジカクシ科ヤブラン属
前号掲載の「ヒメヤブラン」と同科同属。
「ヤブラン」の名は「藪に生え、蘭のような葉をもつ」この植物の特徴に由来します。
ヒメヤブランが葉も花も小さいのに比して、ヤブランは艶やかな濃緑色の葉が50㎝近くまで伸び、美しい紫色の花をびっしりと付ける花序は10㎝後にもなって、否が応でも目立つ存在です。
それだけに盗掘に遭うのか、二上山でもめっきり少なくなりました。多くの登山者が、哀しく、腹立たしい思いをしているでしょう。
盛夏から秋にかけて咲き続け、花の後にみのる実は丸く黒紫色に輝き、野鳥たちの大切な食料。
ヒメヤブランともども、風邪の咳止めなどの薬としても活用されてきました。
“無住寺となりて藪蘭ばかりかな”(田原憲治) をはじめ寺社の庭との関連で、多く詠まれてきましたが、やはり、ヤブランは野山の林下で木漏れ日を浴びて輝いていてほしい。
大切に、大切に見守り続けてほしい。
続・続・二上山に咲く花々 45
ヒメヤブラン(姫藪蘭)・・ キジカクシ科ヤブラン属
花期は7月~9月。二上山でも各所で咲いています。登山道や遊歩道の傍らにも咲き、可愛らしい花ですが、小さく目立たないのでつい見過ごしてしまいます。
葉は線形、高さ10~15㎝の花茎を直立させ、その上に花をまばらにつけます。
ジャノヒゲ属のジャノヒゲに似ますが、花の色も違い、ジャノヒゲの実が 濃紺色なのに、この種のは黒なので区別できます。
続・続・二上山に咲く花々 44
スイカズラ(吸い葛、忍冬)・・ スイカズラ科スイカズラ属
人里から山野まで、林縁や道端などでよく見かける植物。二上山でも登山道の傍らに多く自生しています。
甘い蜜をもち、甘い香りを漂わせます。花筒のうしろの管から蜜を吸ったのでこの名に。
花は、始め白色だが、受粉すると黄色に変化していきます。ここから「金銀花」との異名も。中国名「忍冬(にんどう)」は冬にも耐えて枯れないことからの名。
花期は5月~7月。花はふたつ並んで咲き、実も並んでみのります 。
続・続・二上山に咲く花々 43
コツクバネウツギ(小衝羽根空木)・・ スイカズラ科 ツクバネウツギ 属
日本固有種の落葉低木。分布は西日本。二上山では明るい雑木林の中に自生し、5月~6月に薄いクリーム色(または白色)の鐘状漏斗型の花を付けます。花冠は2~3cm、先は5裂し、内面にオレンジ色の網目状の紋が目立ちます。
果実はプロペラ状の萼片を付け、それが羽根つきの羽根に似ており、花が同時期に咲くツクバネウツギよりも小さいからこの名に。ウツギ(空木)は枝が中空になるから。
続・続・二上山に咲く花々 42
ミヤマキケマン(深山黄華鬘)・・ ケシ科キケマン属
名に「深山」がつきますが、低山、低地に普通に咲いています。海岸などに自生する「キケマン」と区別するための名とも言われます。 二上山でも、川沿いの道の傍らに固まって咲いています。
4月~7月 、茎の先に3~10㎝の総状花序をつけ、2センチあまりの花をたくさん咲かせます。
けまん(華鬘)は、仏堂の装厳具とされていますが、この花のどの部分が当てはまるのかは解りません。
この仲間は有毒植物ですから、口に入れたりはしないように。
同科,同属のムラサキケマンも二上山ではおなじみの花。
続・続・二上山に咲く花々 41
ヒサカキ(姫榊)・・ モッコク科ヒサカキ属
奈良県ではビシャコと呼ばれて、なじみの深い常緑小高木。雌雄異株で花期は4月ごろ。写真のようにつぼ型の小さな花をたくさん下向きに着けます。
異臭がありますが、光沢のある硬質の葉は、お墓や仏壇のお供えとして愛用されます。
秋には実をならせ、冬にかけて黒紫色に色づき、小鳥たちの大切な冬の食糧。
名は「小さい榊」の意で「ひめさかき」からの転訛とされています。
続・続・二上山に咲く花々 40
ヒヨドリバナ(鵯花)・・ キク科ヒヨドリバナ属
8月~10月、ヒヨドリが人里に出てきて、鳴き始める頃に開花すると言うのでこの名に。二上山の至る所で咲いています。
開花時期も重なる、同じキク科のフジバカマと似ていますが、フジバカマの葉が3裂するのに比べて、この種の葉は裂けません。
旅をする蝶・アサギマダラはこの花にも訪れます。
高さ1~2mの多年草。茎は 直立して、上部で枝分かれし、その先に白または淡紫色の小さな花を密集して咲かせます。花には短毛があります。
この植物は薬草として利用されているそうですが、全草そして蜜にも毒を含んでおり、口に含むなどはしないように。
ちなみに、アサギマダラはこうした毒成分を体内に蓄えて、捕食者から身を守っているとされています。
実には綿毛が付き 、風に運ばれて繁殖域をひろげます。
続・続・二上山に咲く花々 39
ナベワリ(鍋破)・・ ビャクブ科ナベワリ属
ナベワリは単子葉の多年生植物。祐泉寺への道の傍らにあった小さな群落は、無くなってしまい、谷沿いなどで思いかけず出逢う貴重な植物。
茎は、地上からまっすぐに伸びて、途中から少し傾きます。高さは30~60cm。
茎の節ごとにハート形の葉を出し、その葉のわきから、花茎を水平に伸ばして、4~5月頃、緑色の変わった形の花を下向きに咲かせます。
色も色だし、葉の下に隠れるように咲くので目立ちませんが、花弁は4枚、そのうちの一枚が大きくなるので、非対称の花になります。写真でオレンジ色のが葯(花粉の袋)。 希少種なので大切に 。
有毒植物。舐めると頭が割れるくらい、くらくらするそうで 、「舐め割り」から「鍋割り」に転訛したと言うのが語源の有力説。
続・続 二上山に咲く花々 38
ママコナ(飯子菜)・・ ハマウツボ科ママコナ属
二上山の馬の背から雄岳に向かう階段のそばで、初夏から咲き始め、9月ごろまで可愛らしい花をみせてくれます。 山の各所で自生しています。
高さは30~50cm、花の大きさは2cm足らずで、花の喉にあたる所に白い盛り上がりが出来、それが米粒に見えることからの命名。
半寄生植物。他県では絶滅危惧種とされている所もあり、大切にしたい植物です。
続・続 二上山に咲く花々 37
コオニユリ(小鬼百合)・・ ユリ科ユリ属
オニユリによく似ており、花期もほぼ重なりますが、こちらの方がやや小ぶりです。
コオニユリはむかごがなく、茎が緑色
違いは むかごがないこと。むかごをつくるユリは国内ではオニユリだけ。それと長い茎がコオニユリは緑なのです。
コオニユリは二上山ではオニユリの咲く馬の背に咲くほか、山の各所で自生していますし、人里にも多く自生し、また植えられています。
続・続 二上山に咲く花々 36
オニユリ鬼百合・・ ユリ科ユリ属
二上山の雄岳と雌岳間の鞍部「馬の背」の売店(元旦には開店)裏に、毎夏大輪の豪華な花を咲かせます。 迫力のある花ゆえ、この名になったとのこと。
紫褐色の茎とオレンジの花
優に1mを超す茎は紫褐色で、細かい斑点があります。花期は 7 ~8月。花は鮮やかなオレンジ色で暗紫色の斑点が目立ちます。下向きまたは横向きに咲きます。
黒いむかごで殖える
立派な花だが、種子をつくらず、葉の付け根に生じる黒く丸いむかご(珠芽、零余子わき芽が養分を蓄えて肥大化したもの)で殖えます。このむかごは「むかご ご飯」として食用になり、また根の鱗茎は「ゆり根」として昔から食べられています。
夏、元気をもらえる 花
生い茂る草むらから高く突き出て、赤く大きな花を咲かせる姿は夏そのもの。当然、夏の季語。
「安土城址なる鬼百合のまつさかり」(河合照子)
「鬼百合のこれみよがしの蕊の反り」(鷹羽狩行)
全国の山野に自生
九州から北海道まで、草原山野、さらには人里にも咲いて、古代より日本人に親しまれてきた植物ですが、古くに大陸から渡ってきたとの説もあるようです。
むかごが見えています
続・続 二上山に咲く花々 35
ゲンノショウコ(現の証拠)・・ フウロソウ科フウロソウ属
有名な胃腸薬
日本ではドクダミ、センブリと共に3大民間薬の一つ。下痢どめの妙薬として用いられ、そして薬効が速やかに現れる事から和名はこの名に 。同様の意からイシャシラズ、タチマチグサ 、テキメンソウの別名もあるから面白い ですね 。
ゲンノショウコの源平合戦
二上山はもとより、あぜ道、土手などにもよく咲いている花ですが、全国的には静岡県の富士川あたりを境にして東日本には白花が、西日本には赤花が多いとされ、平安時代後期の“富士川の戦い”をもじって“ゲンノショウコの源平合戦”(源氏の旗は白、平家のは赤)と言われています。しかし、ピンクと白とが近接して咲いていることもあったように思います。
なじみ深い花も、減少が心配
日本人にはなじみの深いこの植物も、近年少なくなっているのが心配です。 花期は7月頃から咲き始めて、10月ごろでも花を見ることがあります。高さ 30~50cmくらいの高さになり、1~1.5cmの可愛い花をつける多年草。夏の季語で、この花を詠んだ句に「山の日が げんのしょうこの花に倦む」(高浜年尾)、「踏みそうなところに 現の証拠かな」(雑賀遊)など。
続・続 二上山に咲く花々 34
クサギ(臭木)・・ シソ科クサギ属
独特の悪臭がするので、この名がつけられていますが、昆虫少年たちは、そんなことはお構いなし、この花に集まるアゲハチョウの仲間を捕えようと、この樹の下で待ち構えたものです。 懐かしい植物です。
花から突き出る雄しべと雌しべ
右の写真のように開いた白い花から大きく飛び出しているのが4本の雄しべと1本の雌しべ。写真をよく見てください。 先端に濃紫色の(葯やく=花粉が入っている袋)を付けているのが雄しべ。
近親交配さける巧みな 仕組み
この雄しべがまず成熟し、花粉を出しきった後に雌しべが成熟して他花(株)からの花粉を迎えます。これを雄蕊先熟(ゆうずいせんじゅく)と言い、近親交配を避ける仕組みなのです。進化とはすごいですね。身近な花ではキキョウが雄蕊先熟花です。逆に雌しべが先熟するものは雌蕊先熟花 (しずいせんじゅくか)と呼ばれ 、オオバコはその一例です。
よく目立つクサギの実
10月頃、クサギも実を付けます(写真左)。がくが真っ赤に染まって星形にひろがり、実は美しい藍色に輝きます。小鳥に食べてもらうためだとされていますが、小鳥も甘い順に食べていくので、クサギの実は糖度が低いのか、よく残っていて人の目を引きます。
続・続 二上山に咲く花々 33
ムラサキニガナ(紫苦菜)・・ キク科アキノノゲシ属(ムラサキニガナ属の説も)
6月~8月、二上山のいたる所で、長い (60~120cm) 茎を立て、花の重みなのか、登山道に倒れ掛かるように、行く手をさえぎります。
そして、すでに始まっていますが、花が実を結んで、白く長い綿毛(冠毛)を付けた種子が風に乗って四散し、繁殖域を広げていきます。
地域によっては絶滅危惧種
二上山では、普通にみられるこの種も、地域によっては絶滅危惧種とされており、大切にしたいですね。
続・続 二上山に咲く花々 32
キランソウ(金瘡小草)別名ジゴクノカマノフタ・・ シソ科キランソウ属
目を引く濃紫色の花
山に行かなくても、田畑の畦などに咲いていますが、意外と知られていません。二上山でも、登山道の各所でひと群れずつ 、静かに咲いていますが、目を引くのは濃い紫の花色。
名は花の色からか
和名の由来には諸説あるようですが、この花色にかかわる説が多いのです。一例をあげると織物の金襴(きんらんどんすの金襴) に見立てての 「 キンランソウ」からの転訛説。
身近な薬用植物
漢字表記の「金瘡小草」は中国名ですが、そのまま当て字として使用。金瘡は刀傷のこと。この植物が刀傷やうち傷に有効だからとのこと。日本でも切り傷はもとより、高血圧、去痰、鎮咳、解熱、健胃、下痢止めなどの薬として使われてきたようで、地方には「イシャゴロシ」とか「医者泣かせ」の異名も。
別名の「地獄の釜の蓋」とは
この変わった名は、キランソウの茎、葉が地面を這うように広がって、地面を覆うようになる生態が地獄への通路を塞いでくれる、の意味と、万病を治す効能が命を助けるの意と、二つの意味からの命名のようです。面白いですね。ちなみにシソ科なのに、茎が丸いのも特徴。
くりぬいた岩の中の石仏(赤坂山・粟柄峠)
花期は春から初夏。
続・続 二上山に咲く花々 31
コクラン(黒蘭)・・ ラン科クモキリソウ属
7月、コクランが花を開きます。 地上に生えるランで、二上山では林の下、渓流の脇、竹藪の中などでも自生しています。高さは15cm ~30cm 。
地表に光沢のある 3~5枚の卵状楕円形の常緑の葉を広げるので、花期以外でも、注意していればすぐにわかります。
名は花の色から
その葉の上に、まっすぐ花茎を伸ばし、独特の形をした花をまばらに着けますが、その花の色が暗紫色で地味なので、目立ちません。でもその地味さが幸いしてか、人間による盗掘、乱獲を受けないで済んでいるように思われます 。
種名はこの花の色によるもの。
花期は 6 ~7月。
続・続 二上山に咲く花々 30
ホオノキ(朴の木)モクレン 科モクレン属
大阪側登山口の一つ「万葉の森」の登山道の傍らにホオノキが3本たっています。秋になると大きな葉を地面に散り敷くので、すぐにわかります。
春から初夏にかけて大きな(直径15cm)白い花を咲かせますが、何分大木なのと、30~40cmもの大きな楕円形の葉の集まり(輪生状)の上に、上向きに咲くので、花そのものは見過ごしてしまいがちです。
でも大きくて、強く甘い芳香を放つこの花は魅力いっぱい。 昔から、日本人に親しまれてきました。
「奥飛騨の棒の雨ふる朴の花」(白鳥竣) 、「朴ひらき大和に花をひとつ足す」(森澄雄) 、「花に朴人にはありし志 」(後藤比奈夫)など詩歌にも詠まれてきました。
ちなみに、「朴の花」は初夏の、「朴の実」は晩秋の、そして「朴落葉」は初冬の季語となっています。
懐かしい朴葉味噌 料理
ホオノキでまず想いだすのは、飛騨高山の宿で出された朴葉味噌料理です。皿のようにひろげた枯れた朴葉に肉やキノコを味噌と一緒に載せ、下から焙りながら食べましたが、朴葉と味噌の香りが食欲をそそり、不覚にも食べ過ぎました。絶品でした。殺菌力・抗菌力があるとされる朴葉は昔から食品保存にも、食器代わり としても使われてきたそうです。
アレロパシーを持つホオノキ
ホオノキはある物質を出して、他種植物の発芽や成長を阻害するとされています。こうした植物の働きはアレロパシー(他感作用)と呼ばれていて、かつて日本の空き地を席捲したセイタカアワダチソウや今、川の土手や空き地に爆発的に広がっているナヨクサフジ(別名ヘアリーベッチ) は強力なアレロパシーを持っているとされています。
秋に咲くヒガンバナもこのアレロパシーで雑草駆除にも役立っていると考えられています。
農業にも活用されるアレロパシー
現在、アレロパシーは植物間の相互作用、防御作用として捉えられ、農業で活用がすすんでいます。ナヨクサフジによる雑草駆除、一方でトマトとバルジーの相互成長促進など。
続・続 二上山に咲く花々 29
ガガイモ(鏡芋・蘿藦)・・ キョウチクトウ科イケマ属
数年前まで大阪側登山口の万葉の森近くの空き地に旺盛に繁茂していましたが、現在そこでは見かけなくなっています。
和名の由来は諸説有るようですが、割れた実の内側が鏡のように光るので「鏡いも」と言われ、それが訛ってこの名に、と言うのが有力説のようです。 「芋」は実の形によるとの事。
花期
は7月~8月。ツル性の多年草。
右の写真でも分かるように花冠に毛が密生しますが、種子にも長い毛があり、これを綿の代用や朱肉に用いたそうです。
実は薬用にされ、強壮剤として使われるほか、止血、解毒、腫れ物などに効くとされています 。
若葉は茹でて食べられま すが、有毒なので食べ過ぎないように 、とのこと。
続・続 二上山に咲く花々 28
ナナミノキ(七実の木)モチノキ 科 モチノキ属
和名の由来
には諸説あり。実がやや楕円球形なので「 ナガミノキ 」と呼ばれていたのが、訛って今の名に、との説が納得できそうです。別名の「ナナメノキ」も実の形に由来するとの事。
山中にも自生しますが 、鳥谷口古墳裏からの登山道入口で毎年、枝もたわわに赤い実をたくさん実らせますが、今年1月末にはすっかり無くなっていました。小鳥に食べられたのでしょう。
花期
は6月~7月。小さいながらも可愛らしい。 雌雄異株。
材
は固く、印鑑や櫛の材料。
樹皮をむいて 、トリモチを
つくれるらしいが、私の幼少時代はもっぱらモチノキを用いていました。最終段階で、苦いのを我慢しながら、粘度を強めるために、噛み続けたのを思い出します。
続・続 二上山に咲く花々 27
キリ(桐)・・ キリ 科 キリ 属
二上山ふるさと公園の山側林の中にキリの巨木が数本あり、5月頃、大きな紫色の花を空高く、多数咲かせる。またその樹下には多数の花を落下させる。花冠は5㎝くらいの大きさ。
材は軽く、しかも湿気を通さず、狂いが少ないのでタンス、下駄、楽器などの材料として尊重される。
また耐火性に富み、金庫の内張りとしても用いられる。
葉をデザイン化した紋章・家紋も良く知られている。
続・続 二上山に咲く花々 26
タツナミソウ(立浪草)シソ科タツナミソウ属
花期は5月~6月
登山道の路傍、林の縁などに小さな群れをつくって花を咲かせます。
地下茎から茎が立ち上がり、20~40cmに伸びて穂状に多数の花を同じ方向に咲かせ、その姿が打ち寄せる波頭の紋様に見えるところからの命名。この花が目に付くようになると山は初夏から夏へと移っていきます。
続・続 二上山に咲く花々 25
アケビ(木通)・・ アケビ科アケビ属
このシリーズの「続・二上山に咲く花々」の④でミツバアケビを紹介し、和名の由来も書きましたが、本種も大きな花が雌花、固まって咲く小さなのが雄花です。
4月に新芽と共に開花し、強い芳香を漂わせます。秋になる実は10cmほどの楕円球になり、皮は薄紫で独特の魅力をもち,中の果実は甘くて美味しい。
続・続 二上山に咲く花々 24
ハリエンジュ(針槐)・・ 別名ニセアカシアマメ科ハリエンジュ属(ネムノキ科説も)
二上山の大阪側登山口・万葉の森周辺に4~5月頃、高い樹全体に白い蝶型の花を房状に沢山ぶら下げます。北米原産ですが、明治時代に日本に導入され、全国各地で街路樹として盛んに植えられ、アカシアの名で親しまれてきました。
歌でも俳句でも
北原白秋作詞・山田耕筰作曲の唱歌「この道」や、近くは西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」で歌われたのも、実はこのニセアカシアなのです。
俳句では夏の季語ですが、明治書院刊「新撰俳句歳時記・夏編」で「一般にアカシアと呼んでいるが、『針槐(ハリエンジュ)』『にせあかしあ』が正しい名」と説明し、例句に「花咲きて偽アカシアの名の悲し」(渋沢渋亭)を挙げています。
人間にとって有用な木
「ハリエンジュ」とか「ニセアカシア」とか、名は紛らわしいのですが、この木は人間にとっては極めて有用で様々に活用されてきました。
枕木や緑化促進にも
まず材は重く、強度も耐久性も高いので、かつては線路の枕木、木釘、船材、スキー板など、また木炭、薪にも使われたそうです。
また、成長が早く、やせた土地でもよく育つので、緑化や治山、砂防などに使われていました。二上山・竹ノ内峠付近でも旧国道や林道の周辺に集中していることから、道路開設後の荒れ地の緑化促進で使われたのではないかと思われます。
ハチミツにも酒にも食べ物にも
花の蜜は良質でアカシア蜂蜜として重用されていますし、花を漬け込んだアカシア酒もあるそうです。また花房そのものは炒めもの、和えものとして食べられるとの事。一度試されてはどうでしょうか。
強い繁殖力が環境問題に
このように人間社会に多彩な貢献をしてきたハリエンジュですが、その繁殖力の強さが「環境破壊」につながるとして、問題視されています。
もともと北米原産の木を世界各地に持ち込み、役立つからと言って散々活用してきたのは人間なので、 いまさら「侵略的外来植」として排除の対象にされるのは、気の毒というしかありません。
ニセアカシアという種名も可哀そうですよね。
続・続 二上山に咲く花々 23
レンギョウ(連翹)モクセイ科レンギョウ属
中国原産。 渡来時期については諸説あるようで、その後品種改良が進んで、多くの園芸品種も含めて「レンギョウ」と呼ばれる花は少なくありません 。
3月、大阪側登山口・万葉の森近くの笹藪に点々と黄金色の花を咲かせます。 今年もコブシの開花よりも早く咲きだしました。連翹の名は他の植物の中国名を誤用したとの事。 春の到来をいち早く知らせてくれる花 。 大切にしたいですね。
実などは漢方薬 の原材料。
続・続 二上山に咲く花々 22
カラタチバナ(唐橘)サクラソウ科ヤブコウジ属 (旧分類ではヤブコウジ科)
写真は故澤木仁さん
谷筋の日陰に自生しています。数も少なく地味な花(花期は7月頃) なので、目立ちませんが 、冬に成る実は真紅で光沢があり、大きな濃緑の葉とのコントラストも鮮やか。
そのため、百両とも呼ばれてマンリョウ、センリョウなどと共に、縁起木とされ、正月の飾りにも使われます。実は食べられ、果実酒も造られます。
縁起木の名の由来
この種は江戸時代に品種改良が進み、高い値で取引されたので、「百両」の別名が付けられ 、この種より実が大きかったり、 多かったりする縁起木に万両 、千両の名付けが行なわれたとの事。ちなみにヤブコウジは十両、アリドオシは一両と呼ばれ、いずれも二上山に自生していますが、億両とされるミヤマシキミは二上山ではまだ出会っていません。
続・続 二上山に咲く花々 21
キョウチクトウ(夾竹桃)キョウチクトウ科キョウチクトウ属
写真は故澤木仁さん
インド原産のこの花が二上山雌岳の頂上に咲くのには矢張り 違和感を覚えます。
原爆後「75年間 草木も 生えない」と言われた広島で、いち早く花を咲かせて人々に希望と勇気を与えました。
広島市の花に指定され、「 夾竹桃 のうた 」が唄われています。「 夏に花咲く夾竹桃告げよう世界に原爆反対と」。同市の平和公園にも平和大通りにも植えられています 。 ただ有毒なので要注意。
続・続 二上山に咲く花々 20
トリガタハンショウヅル(鳥形半鐘蔓)キンポウゲ科センニンソウ属
キンポウゲ科のつる植物。高知県の鳥形山での命名でこの名に。金剛山の青崩 あおげ 林道などではよく見ますが、二上山でも林縁部で咲いてい
ま す 。花期は 4 ~6月。
花の色は白~白黄緑色、清楚で美しい。花の大きさは 2 3 ㎝。
ハンショウヅルの仲間 は 釣り鐘 形のものが多いが、この種は 4つの 花びら の 先端 が 外側に 開きます。
同科同属のクレマチスの仲間。園芸種としても
扱われています。
続・続 二上山に咲く花々 19
ヤマガキ(山柿)カキノキ科カキノキ属
二上山山中の各所でカキが自生しています。また 麓では山際の畑や土手にいろんな種類の柿が植えられています。
右の写真は故・澤木仁さんが、二上山中で撮ったものですが、果たしてヤマガキの花なのかどうか、不勉強の私には判別がつきません。
図鑑によると、ヤマガキ自体も元々日本在来種なのか不詳だとの事。
夏、山の中を歩いていたら、地面にカキの花が沢山落下しているのに出会います。
そして秋、山に残されている動物の糞には、柿の種がいっぱい交じっているのがあります。 人里で食べてきたのか、ヤマガキが熟して落下したものを食したのか、いろいろと思いめぐらしながら、可愛いカキの花を思い出します。
奈良県は柿の名産地、五條市西吉野湯塩の小高い山の上に柿博物館があります。 展示されている柿の品種の多様さに驚かされますが、その駐車場から見る広大な柿畑のひろがり、殊に秋の稔りの光景は圧巻です。
続・続 二上山に咲く花々 18
ツワブキ(石蕗・艶蕗)キク科ツワブキ属
10月~11月に咲いています。二上山ふるさと公園の展望台への階段の両脇にも咲いていて、花の少ない晩秋の山裾を鮮やかに彩っています。
この花を見ると、「ツワの佃煮」を思い出します。
私が育った長崎だけでなく、九州各地で「ツワ」と呼んでツワブキを食べます。関西ではヤマブキは食べますが、ツワブキは余り食べないようです。
野山でツワブキの茎を摘み、皮をむくのは子供の仕事でした。指の爪の中まで黒く染めて灰汁(あく)抜きの準備をしたものです。
葉は大きく、光沢があり、艶葉蕗(つやはぶき)から「つわぶ」への転訛説が名前の由来の有力説です。
初秋の季語ですが、秋から冬へと花期は長く、園芸品種も多く、家庭でもよく植えられています。
続・続 二上山に咲く花々 17
クコ(枸杞) ナス科クコ属
山歩きクラブのH さんに教えてもらい、岩屋峠で写真を撮りました。中国名をそのまま和名(音読み)としていますが、元々の意味は「カラタチ(杞柳)に似て枸橘(柳の仲間)のようにしなやか」な植物との事らしい。
日本にも自生し、今、二上山で咲いています。赤い実はドライフルーツやクコ酒に、葉はクコ茶に、根は薬に、そして若葉はクコ飯にと多様に活用されてきました。
橿原市久米寺の開祖とされる久米の仙人は、このクコに詳しく、人々にその栽培と活用法を教えたとされています。
花期は夏~秋ですが、春の季語で「枸杞垣の似たるに迷ふ都人」(蕪村)とあり、垣根にも使われてきたようです。
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シュウカイドウ(秋海棠) シュウカイドウ科シュウカイドウ属
9月初旬、二上山の山中で、点々と咲いていました。
江戸時代初期、中国から園芸植物として入ってきましたが、松尾芭蕉が「秋海棠 西瓜の色に 咲きにけり」の句を残しているように、江戸時代の園芸ブームに乗ったのか、日本各地に広がり、今や野生化して、東京・高尾山や大阪・岩湧山などは有名です。
海棠(バラ科)に似た花を秋に咲かせることから付けられた中国の名を音読みにして和名としていますが、世界の学名は科、属とも「Begonia」の文字が入り、現在多くの家庭や花壇で植えられているベゴニアの仲間です。
雌雄異花同株の植物、画像で花弁・ガクを広げているのが雄花で黄色の部分は雄しべの塊です。下向きの小さい花が雌花です。種子と珠芽(しゅが)の両方で繁殖します。
球根で越冬しますが、耐寒性が強く、熱帯地方原産なのに日本で野生化できているのは、この球根ゆえでしょうか。
長崎経由で輸入されたので、「ナガサキソウ」の別名があると牧野富太郎博士は書いています。
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カナメモチ(要黐)別名アカメモチ バラ科カナメモチ属
写真・文 松尾忠
奈良県側當麻の登山口にある當麻大池の山側の周囲の生垣としても植えられています。
春の若芽が光沢ある真紅で美しく、その陰に咲く花を見過ごしがちですが、パッチリと開く小さい白い花の集まりも見ごたえがあります。花期は5~6月。
秋になる実も赤くてよく目立ちます。
材質が固く、扇の要に使われ、一方葉はモチノキに似るのでこの名前に。
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タツナミソウ(立浪草)シソ科タツナミソウ属・花期は5月~6月
写真は故・澤木仁さん
登山道の路傍、林の縁などに小さな群れをつくって花を咲かせます。
地下茎から茎が立ち上がり、20~40cmに伸びて穂状に多数の花を同じ方向に咲かせ、その姿が打ち寄せる波頭の紋様に見えるところからの命名。この花が目に付くようになると山は初夏から夏へと移っていきます。
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ムラサキケマン(紫華鬘) ケシ科キケマン属
花言葉は「 喜び」。登山道の傍らでよく目立つ花を咲かせます。
高さは 20 ~50cm。 華鬘は仏教寺院の装飾品一つ。もとは生花の輪だったらしい。でもこの花には、荘厳さより春を迎える喜びを感じます。
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ヤマブキ(山吹) バラ科ヤマブキ属
花言葉は「気品がある」。黄金色を山吹と言うように、花の色は鮮やかな黄で、緑葉とコントラスが魅力的。湿り気のある崖などに張出すよう枝を伸ばし、それが風に揺られる様子が名前の由来という。
園芸品種のヤエヤマブキは結実しません。
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ヤブヘビイチゴ(薮蛇苺)バラ科キジムシロ 属
花期は4月~6月
林道や登山道の路傍に咲いています。
真っ赤な実は小さい粒粒をたくさんつけて、よく目立ちます。私が子供のころ 、「赤い部分が毒だから食べてはいけない」と言われ、赤い部分を取り除いて食べたことがありますが、無味で美味しくありませんでした。「食糧難時代」でなければ、食べてはいなかったでしょうね。
「蛇苺」は中国での名で、蛇が食べるからとか、この実を食べにくる小動物を狙う蛇が多いからとか言われているそうです。
赤い色からの連想ではないでしょうか。
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ニガイチゴ(苦苺)バラ 科キイチゴ 属
花期は4月
林縁部や空き地、荒れ地に 1~2メートルの茎を立ち上げて、よく枝分かれし、時として 藪を作ります。
実は赤くて甘いのですが、核に苦がみあるのでこの名になりました。
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コブシ(辛夷)モクレン科モクレン属
花期は4月
花言葉は友情、友愛
早春の山を代表する白い花で、芳香があります。二上山では葛城市のふるさと公園と大阪府河南町の登山口・万葉の森にそれぞれ植えられていますが、雌岳~原岳~麻呂子山の稜線にも自生しています。
花の下に葉が一枚付くのがタムシバ(同時期によく似た花を咲かせる同属の植物)との違いです。
和名の由来は蕾や果実が人間の拳に似るからとの事。
昔から、この花の開花が田仕事を始める目印とされたそうです。
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セキショウ(石菖)ショウブ科ショウブ属
花期は4~5月
祐泉寺から馬の背への道のそばで、谷川の水辺に群れて自生。常緑の剣状の葉を茂らせていますが、春から初夏にかけて黄褐色の肉穂花序(にくすいかじょ・長さ7~10cm)を出し、そこに小さい花を密に咲かせます。名は石を抱く菖蒲の意
根茎や葉は薬草として用いられ、神経痛や痛風の治療に使用されています。
例えば蒸し風呂(湿式サウナ)で用いられる時には、セキショウの葉を床に敷いて高温で蒸す状態にして、鎮痛効果があるテルペンを成分とする芳香を放出させて、皮膚や呼吸器から体内に吸収するようにして利用するそうです。
(下7 行は{WIKIPEDIA}より引用)
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ヤシャブシ(夜叉五倍子)カバノキ科ハンノキ属
花言葉は「永遠」
花期は3~4月
雑木林に自生する落葉小高木。3月ごろ開花し、雄花序は5cm程で、枝から垂れ下がり、雌花序は少し下部から直立します。
植物名は熟したごつごつの実を夜叉に見立て、その果穂を五倍子(ふし・黒色の顔料)の代用としたため。
日本固有種。
続・続 二上山に咲く花々 5
アケビ(木通)アケビ科アケビ属
このシリーズの「続・二上山に咲く花々」の④でミツバアケビを紹介し、和名の由来も書きましたが、本種も大きな花が雌花、固まって咲く小さなのが雄花です。4月に新芽と共に開花し、強い芳香を漂わせます。秋になる実は10cmほどの楕円球になり、皮は薄紫で独特の魅力をもち,中の果実は甘くて美味しい。
続・続 二上山に咲く花々 4
アオモジ(青文字) クスノキ科クロモジ属
花言葉は「友人が多い」
早春、山肌の一角が黄白色に見え、近寄るとさわやかな香りが漂っています。アオモジがたくさんの花を開いているのです。
香りがいいので仲間のクロモジと共に和菓子の爪楊枝の材料とされます。
枝が緑色なのでこの名に。雌雄異株。
続・続 二上山に咲く花々 2
クズ(葛) マメ科 クズ属
この花を見たことがない人は少ないのではないでしょうか。野山はもちろん住宅近くのため池の土手や空き地でも他の植物やフェンスに巻き付き、覆い隠して生い茂ります。
秋の七草のひとつ。花をめでるよりも食用として重用されたほか、薬用、工作用、家畜飼料など大昔から人間に活用されてきました。
食料として活用
くず粉、葛切り、葛餅など用途は多様で、つる先や花を天ぷらにするなど、飢饉の際の救荒植物としても利用されてきました。
家畜の飼料として
農家では、牛、馬、やぎ、うさぎなどに食べさせたようで、アメリカでも日本から移入しましたが、飼料にしなくなると旺盛な繁殖力が嫌われて、有害植物、侵略的外来種として駆除の対象になっているようです。クズがかわいそうですが、あのすさまじい繁茂の様を見ると、頷かざるを得ないなと思うのです。
葛根湯にはお世話になっています
薬の原料としても名高く、私も葛根湯(かっこんとう)にはお世話になりました。近年宮崎大学がクズからエタノールを抽出することに成功したようです。
続・続 二上山に咲く花々 1
アオキ(青木) ミズキ科(ガリア科説も)アオキ属
花言葉は「若くて美しい」 花期は3~5月
林下に普通に自生する高さ1~3mの常緑低木。雌雄異株。大きくて光沢のある濃緑の葉と赤い楕円球形の実はともに美しく、冬の山の貴重ないろどりです。若い幹が緑なのが名前の由来。
様々な園芸品種が作られ、庭木としてよく植えられていますし、葉はあぶって腫物、切り傷、火傷の患部に貼って治療に使います。また奈良県天川村洞川の民間薬・陀羅尼助の原料の一つ。なお蕾や新芽は天ぷらにしたり、お浸しなどで食用とされるなど、日本人の生活と深くかかわってきた植物です。
アオキの実(写真は松尾)
世界で愛される日本発のアオキ
・・アオキは、日本原産ですが世界的にも愛されているそうです。
17世紀頃からヨーロッパの支配層の間で一大植物ブームがおこり、プラントハンターと呼ばれる採集専門家が世界中を歩き回って新種、珍種を集めました。日本では長崎の医師・シーボルトなどもプラントハンターとしての役割を果たしていますが、鎖国政策が解けた江戸時代末期、ロバート・フォーチュンが日本に来て、日本の植物を物色します。そして江戸庶民に愛されるアオキを1783年イギリスに持ち帰りますが、雄木だけだったので、実が出来ず、数年後わざわざ雌木を取りに来て、その結果ヨーロッパでもアオキの葉と実、そして様々に改良された園芸品種を楽しむことが出来るようになったそうです。